レモンドロップス。
「空が高ーい」
「なんにもない空だな」
コスモス畑を見渡すあぜ道に腰掛けて、あたしたちはのんびり空を見上げた。
ときどき、風がコスモスたちをザワっと揺らしては通り過ぎていく音だけが聞こえる。
「ほんと、からっぽの空だね」
「あんまり見てると吸い込まれるぞ~」
陽斗はそう言って、、あたしの左手を両手で包んだ。
あたしはその子供っぽいしぐさがおかしくて、思わず笑ってしまう。
「大丈夫、ここにいるから」
「うん」
陽斗はあたしの手を握ったまま、ごろりとあぜ道に横たわった。
「ちょっと、背中汚れちゃ・・・」
「来月さ」
陽斗があたしの言葉をさえぎって、言った。
「ラピスっていうレコードレーベルの人と会うことになった」
「うそっ?」
「ほんと。まあ、鳩田さんのコネみたいなもんだし、ちょこっと挨拶したりするくらいなんだけどさ。でも実際レーベルの人と直接音楽の話できるわけだし・・・」
「そっか。チャンスだね、おめでとう!」
ラピスって初めて聞く名前だったけど、あたしは音楽のことを良く知らない。
でも、陽斗にとっては間違いなくチャンスなんだ。
「おめでとうはまだ早いって」
陽斗は笑っているけど、その声は気のせいかちょっと硬い。
「・・・なにか不安なの?」