レモンドロップス。

思わず口から出てしまった言葉に、陽斗ちらっとあたしを見た。


「そう見える?」

「うん、なんか大喜びって感じに見えないから・・・」

こんなこと言って怒るかな、そう思ったけど、陽斗はふうっと大きく息をついて笑った。


「正直、びびってる・・・ていうか不安?なんだろ、ぼんやり見てた夢が急に現実になるって、嬉しいけど、同じくらい不安な気持ちがある」

陽斗はじっと空を見上げている。

「自分の夢は夢じゃなくなる、現実になる。リアルになるんだ。それってある意味夢をなくすってことになるんじゃないか・・・」


「そうなったら、また新しい夢がはじまるよ、きっと。」

あたしにはまだこれといういう夢がない。

けど、陽斗にはいつでも夢を見ていてほしくて、必死にそう言った。


「・・・だといいな」

陽斗が突然がばっと起き上がる。

「彩香の夢は何?」


うっ、いつもタイミングよくあたしの弱点をついてくるなあ・・・。

「あたし、まだ特に夢ってないかも。もう高2の2学期だし、進路も決めなきゃいけないのにね」


偏差値的にこの大学は無理、数学は苦手だから理系の学部もパス。

・・・あたしの将来を消去法で決めちゃっていいのかな。

それって、自分で選んだって言わないよね。

これまで思っていない考えがふと浮かんだ。


「見つかるよ」


< 146 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop