レモンドロップス。

「ふあ~、いいお天気!」

約束の日曜日、その日は朝から秋晴れの快晴だった。

乾いた風も心地いい。


陽斗との約束は夕方だから、その日はゆっくり10時過ぎに起きた。

窓を開け放すと、秋の空が高く高くまぶしく見える。


今頃、陽斗はお母さんのお墓に向かっているのかな。

聞いた話では、お母さんの命日は、陽斗とおばあさん、遠くに住んでいる陽斗の叔父さん夫婦で集まってお墓参りすることになっているらしい。



「うちは親戚少ないし、毎年そんなもんだよ」

前の日、陽斗はそう言って笑っていた。

「そっか。でもその分静かにお母さんと話ができるね。」

「うん、墓参りもそんなに行かないし、たまの親孝行かな」


きっと陽斗にとって、お母さんの命日は、お母さんと触れ合えるとても大切な日なんだろうな。

その気持ちが伝わってきて、あたしはある質問を飲み込んだ。


『お父さんはお墓参りに来ないの?』



陽斗とお父さんの関係については、あたしはほとんど知らない。

ただ、陽斗はお父さんのことをすごく恨んでいるだろうと思っていたから、そのことは聞けなかった。

もしかしたら、聞くのが怖かったのかもしれない。


とにかく、今日は陽斗にとっては特別な日。

たぶんあたしと会う時は、いつもより疲れているだろうな。

陽斗がリラックスできるように、楽しい気持ちになれるように、優しくしてあげなきゃ。



「・・・はくしゅん!」

あたしは大きく伸びをすると、秋の空気にくしゃみを一つした。

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