レモンドロップス。
あたしの不安そうな顔に、いずみちゃんはすぐに気づいた。
「うん、今日はずっとどこかに出かけてて、携帯に連絡したらこっちに向かうって。大丈夫、陽斗のおばあちゃんが連絡くれたの」
陽斗のお父さんが来ることで、新しい揉め事が起こることを心配するあたしを、むしろいずみちゃんは気遣ってくれている。
なんだか申し訳ない気持ちだ。
とその時、突然頭の中にある考えがぽつんと浮かぶ。
「いずみちゃん…、今日は、その、陽斗のお母さんの命日だってこと知ってる?」
「うん、陽斗から聞いた」
「もしかして今日、陽斗とお父さん、お墓で顔を会わせたってことないかな」
陽斗はひとりでお墓に残ると言ってた。
お父さんは今日ずっと出かけていた。
二人がその時会ったとしたら…、その直後に陽斗が事故を起こしたなら…。
その時間の中に、陽斗の事故の原因があるのかもしれない。
「あたしにははっきり言ったことないけど、たぶんパパは毎年お墓参りに行ってると思う。いつもその日は家にいないから…。」
いずみちゃんはあたしが何を考えているのかなんとなく察したように、口をつぐんだ。
あたしも同じように、それ以上自分の考えを口に出さなかった。
今はそのことは考えないようにしよう。
今はまだ。
あたしたちはそのまま、遠くの街の灯りを、月の光を黙って見つめていた。