レモンドロップス。
◇扉を開くとき
浩一郎さんたちとは待合室で別れて、あたしはもう一度陽斗の病室に向かった。
来たときよりも、なんだか体重が増えたように足が重い。
陽斗とどう話せばいいんだろう。
声が回復してから、陽斗は普段と変わらず明るそうに見えていた。
それに安心して、のんきに接していたあたしを陽斗はどう思っていたんだろう。
今更のように不安が大きく膨らむのを感じた。
―――ガラッ
でも今は、こうしてドアを開けて陽斗と一緒にいることが大事なんだ。
そう、自分に言い聞かせながら陽斗の病室に入った。
「陽斗?」
「・・・彩香、来たんだ」
窓の外を見ていた陽斗は、ゆっくりとあたしの方を振り向いた。
かすかに残った夕日の光のせいか、顔がうす赤く見える。
「うん、部活の練習で遅くなって・・・、間に合わないかと思って焦ったよ」
あたしが笑って言うと、
「そっか・・・、別に忙しいなら無理してくることないのに」
独り言のようにつぶやく陽斗に、ドキッとした。
やっぱり、なんだかいつもと様子が違う。
「あたしが来たくて来てるだけだから、気にしないで。小走りで来たらいい運動にもなるしね。あ、それからクラスの宿題だって・・・」
「裕次郎たち、なんか言ってた?」
あたしの言葉をさえぎって、陽斗が言った。