レモンドロップス。

「え?」

「裕次郎たちと会ったんだろ。声、聞こえたよ」

陽斗の声は不思議と静かで、あたしは身動きが取れないような重苦しさを感じた。

やっぱり、聞こえていたんだ・・・。


「あー、うん、ばったり会った。タイミング良すぎてビックリだったよ」

まるで今思い出したみたいに、なんでもない振りをしてそう言うと、

「俺のこと、何か言ってた?」

陽斗は口元に微笑さえ浮かべている。


でも、いつも見ている笑みとは何かが違う。

あたしに何を言わせたいんだろう・・・。

不安が、胸から喉元までゾワゾワと這い上がってきた。


「思ってたより元気そうで良かったとか、また来週顔出すとか言ってたけど・・・」


「それだけじゃないだろ」

陽斗は静かな声で言う。

「俺のこと見て、がっかりしてなかった?」


「え、そんなこと言ってなかったよ・・・」

あたしはその後の言葉が続かなかった。

陽斗がそんなことを言うなんて、信じられなかった。


「俺、なんかもうバンドのこととか考えるの嫌なんだよ。情けない奴とか思われてるかも知れないけど。」

はは、と笑う陽斗の声は聞いたことがないくらい弱々しい。

「だってもう無理なんだろ?俺の左腕。ギターも弾けないし、バイクにも乗れない。こうやってぶら下がってるだけなんだろ?」

「それは・・・、リハビリすればまた動くかもしれないよ?それに陽斗は歌だって歌えるじゃない、また」

頭に浮かんだ頼りない言葉を、あたしは必死につなげてみる。

でも。

「だめなんだよ」


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