レモンドロップス。
◇花
「あ、桜。」
「あ、別のクラスになっちゃったよ~。」
あたしと菜美は同時に言った。
「ちょっと彩香、どこ見てんの?前見て前!
あたしたち今年はクラス離れちゃったよ~。」
「げ、ホントだ!」
やば、クラス名簿ぜんぜん見てなかった。
高校2年の第一日目、張り出されたクラス名簿を見る子達で、昇降口前は大騒ぎだ。
なのにあたしはその時、どこからか飛んできた桜の花びらに気をとられてた。
いつからか、なんでか分からないけど、あたしは桜の花が好きだったから。
甘くて、消えそうなくらい淡い色の花が好き。
そんな花がフワッと魔法のようにいっせいに咲く、春が大好き。
「まあ6組と8組だし、そんなに離れてないからよしとするかあ。」
「うんうん、あたし毎日遊びに行くからさ!」
「てかうちのクラスあんまりかっこいい子いな~い、暗い一年になりそうだわ。」
菜美は大げさにため息をついた。
うちのクラスはどうなんだろ、クラス数も多いしどうせ見たって分かんないや。
わたしはクラス名簿をろくに見ないまま、新しい教室に向かった。