レモンドロップス。
春休みが始まると、とたんにえらいことになった。
健にぃの言葉にウソはなく、補習や宿題であたしの大事な24時間はあっけなく埋まっていった。
まあ、自分で決めたことなんだから仕方ないんだけどさ・・・。
「彩香、なにブツブツ言ってんの?」
隣を歩く菜美が心配そうにあたしの顔を覗き込んだ。
補習はクラスが関係なく文系コース、理系コースと分かれているので、菜美と行き帰りは一緒になることが多い。
1人で通うより、やっぱり2人で通う方が心強いし、なによりあたしのお尻を叩いてくれるんだからありがたい。
奈美は有名大学の法学部を目指して、塾にも通っている。
学校の勉強で精一杯のあたしとは大違いだ。
乾くんとのあれこれも一時停止のボタンを押しているらしい。
「とりあえず、乾くんとはいい友達でいたいって思ってるんだ。今はそうなれることが一番嬉しいから」
今は、という言い方が若干気になるけど、そう潔く決められる菜美がかっこよく思える。
菜美もキャラ変わったのかも。
でも、そんな姿があたしを励ましてくれていること、菜美はたぶん気づいていないんだろうな。