レモンドロップス。


かばんを床に投げ出してベッドにうつぶせになると、便箋を取り出した。

少ししわが寄ってしまった便箋を指先でそっとなでてから、こわごわ開いてみる。

心臓がいつもの2倍の大きさで胸を打っていて、なんだかとても息苦しい。



手紙の内容はとても短かった。




宮崎彩香様


4月3日の13:00、L団地のさくらヶ丘公園に来てください。

待っています。



戸田陽斗




読み終えると、頭が真っ白になって耳の奥がぐわんぐわん鳴っていた。

何の考えもしばらく浮かんでこなかった。


本当に、陽斗だった。


そう思うだけで、目に涙が勝手ににじんだ。

手紙を握る手がじんと熱い。




どうしよう、どうしよう、どうすればいい?

陽斗はどうしてこの手紙を書いたんだろう。


期待と不安がシーソーのように繰り返し浮かんできては、また沈む。


あたしに会いに来てくれるの?

それとも言えなかったお別れのあいさつのため?


胸が熱くて、心臓の鼓動はドキドキうるさくて、じっとしていられずにベッドから起き上がった。


会いたい、でも会うのが怖い。


部屋の真ん中に立って、手の中の手紙を見下ろした。

目をつぶって大きく深呼吸してみる。


呼吸と一緒に心の中に溜まっていた何かを吐き出した気がした。


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