レモンドロップス。
公園は小さくて、入り口に立つと一目で中を見渡すことができた。
公園といっても遊具とか砂場とかはまったくなく、ベンチと一本の桜の木があるだけ。
柵の向こうには、L団地とバスが走る道路と、あたしの住む街の景色が広がっていた。
そして桜の木の下には、陽斗がいた。
当たり前のようにそこにいた。
そばにあるベンチに座らず、桜の木の下にそのまま座っている。
見覚えのないシンプルなシャツとジーパン。
風にそよいでいる髪の毛は相変わらずキャラメル色だけど、前より少し短くなったかな。
まぶしそうに目を細めている様子に、あたしは時間が巻き戻ってしまったように感じて呆然としてしまった。
陽斗の目があたしの姿を捉えた。
見覚えのある、透明なまなざしだった。
あ、やばい。
早くも泣いてしまいそうだ。
緊張も喜びも吹き飛んで、ただこうして向かい合っているという事実だけで胸がいっぱいになっている。
何を言えばいい?
氷の上を歩くように、ぎこちなく陽斗の方に足を進めた。