レモンドロップス。
「ありがとう、陽斗」
やっと口から出てきたのは、その一言。
それ以上、何を言えばいいのか分からなかったけど、ありったけの思いをこめた。
「俺のほうこそ、ありがとう」
そう言って、陽斗はかすかに咳払いした。
「俺、彩香から大切なものをたくさんもらっていたことに気づいてなかった。笑い顔も、怒った顔も、まっすぐに俺の方に向けてくれていたのに受け止めてあげられなかった。本当にゴメン」
深々と頭を下げる陽斗。
「そんな・・・、謝るのはあたしだよ。あたしの方が陽斗を苦しめてしまったんだし」
「それは逆だよ、俺が勝手に苦しんでいたんだ。彩香の言葉はむしろ俺を救ってくれていたよ。だからありがとうって言いたい」
そう言いながら、陽斗は急に右手を後ろに伸ばすと木の陰から大きな何かを取り出した。
見慣れた、懐かしい光景に、あたしの目は思わず釘付けになる。
陽斗がギターケースを大事そうに抱えていた。