レモンドロップス。
戸田君はちょっと拍子抜けしたように、
「もう帰んの?」
とあたしを見上げた。
「う、うん、そろそろ日も暮れてきちゃうし・・・。今日はほんとにありがと、なんか気持ちが軽くなったかも」
「・・・まあ、それなら良かったけど」
ドロップを口に入れながらモゴモゴと戸田君は言った。
・・・なんかかわいいな。
「じゃあ、戸田君、またね!」
「・・・陽斗でいいよ」
「え?」
「おれのこと、陽斗でいいから」
陽斗、はると。そう言えば戸田君の名前、知らなかった。
「うん分かった、・・・陽斗」
その名前を口にすると、また静まりかけた胸の鼓動がドキンとなった。
「あ、あたしのことも彩香でいいから!」
あわてて言うと、戸田君は急に吹き出した。
「あれ、さやかって読むんだ?読めねーよ」
「ちょっ、何それ、人の名前で笑わないでよ!!」
怒りつつも、あたしはちょっと嬉しかった。
戸田君は、あたしの名前をちゃんと見てたんだ。