レモンドロップス。

振り返ると、げげっ!


立っていたのはなんと健にぃだった。

びっくりしたように、あたしの方を見ている。

よりによってこんな時に担任教師に見つかるなんて!


ところがもっと最悪なことに、

「どうしました?竹村先生」


健にぃの後ろから聞こえてきたのは、口うるさい生活指導の田淵先生の声だった。


どうしよう・・・、こんなところにいるのが見つかったらすぐに家に帰されちゃう!

あとで生徒指導室に呼び出されるかも知れないし・・・。

菜美の顔もこわばっている。



「・・・中に入れ」

健にぃはあたしたちをライブハウスの中に押し込んだ。

「健にぃ、見逃して!今日のライブは友達が出るから、絶対見たいの!どうしても見たいの!お願い!」

焦ったあたしが必死に言うと、健にぃはちょっと困ったように、


「しょうがねえなあ~、今日だけだぞ」

と笑って言った。

「健にぃ、ありがと~!」

「竹村先生と呼びなさいって言ってるだろ!遅くならないうちに帰れよ」

そう言うと健にぃはドアを開けて出て行った。


< 44 / 285 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop