レモンドロップス。
振り返ると、げげっ!
立っていたのはなんと健にぃだった。
びっくりしたように、あたしの方を見ている。
よりによってこんな時に担任教師に見つかるなんて!
ところがもっと最悪なことに、
「どうしました?竹村先生」
健にぃの後ろから聞こえてきたのは、口うるさい生活指導の田淵先生の声だった。
どうしよう・・・、こんなところにいるのが見つかったらすぐに家に帰されちゃう!
あとで生徒指導室に呼び出されるかも知れないし・・・。
菜美の顔もこわばっている。
「・・・中に入れ」
健にぃはあたしたちをライブハウスの中に押し込んだ。
「健にぃ、見逃して!今日のライブは友達が出るから、絶対見たいの!どうしても見たいの!お願い!」
焦ったあたしが必死に言うと、健にぃはちょっと困ったように、
「しょうがねえなあ~、今日だけだぞ」
と笑って言った。
「健にぃ、ありがと~!」
「竹村先生と呼びなさいって言ってるだろ!遅くならないうちに帰れよ」
そう言うと健にぃはドアを開けて出て行った。