レモンドロップス。
一転、会場が明るくなり、周りから歓声が聞こえた。
バンドメンバーが4人立っている。
ギター、ドラム、ベース(たぶん)、そして
「みんな、今週もお疲れさ~ん!陽風です!!」
真ん中で、マイクをつかんで大声を張り上げたのは陽斗だ。
スポットライトが当たってまぶしく輝いた陽斗は別人みたいに見える。
ダダダダダッ!っと勢いよくドラムが鳴り響き、演奏が始まった。
陽斗く~ん!と声をかける女の子、口笛を吹いて歓声を上げる男の子。
みんなすごく楽しそうで、初めて見る風景に圧倒された。
陽斗は見たことないくらいいっぱいの笑顔で、歌ってギターをかき鳴らしていた。
体を激しく揺らして、全体でビートを刻んでいる。
ナンバーは聞いたことない洋楽ロックなのに、いつの間にかあたしも夢中で手を叩いて、歓声を上げていた。
「すごいじゃん、戸田君!!」
菜美が周りの歓声に負けず、大声で言う。
「うん!!すごい!すごいよ~!!」
あたしもも負けずに大声を上げた。
フロア中に陽斗の声とギターは鳴り響いて、あたしたちの体をまっすぐ突き抜けていった。