未定
彼と出会ったのは高校二年の夏。




私が学校の帰りに本屋で雑誌を立ち読みしていた時のこと。

私は突然4、5人の男達に絡まれた。
ただのナンパだと思って無視していたけど、意地になったのか、何人かが体があたるほどの距離まで近付いてきた。

私は少し怖くなり、それでも逃げるのは何だか負けてしまう様な気がして、近付いてきた男達をキッと睨みつけた。



その睨みつけた男達の後ろに、私をジッと見つめる男がいた。

明らかにその集団の1人なのに、何も言わずに私をただ見つめている。

その瞳に、卑しさや悪意は一つも感じられなかった。
それどころか、綺麗で何の汚れもなく見え、私は体が貫かれる感覚を覚えた。


周りの声が次第に聞こえなくなり、私は無意識の内に歩き出した。

五月蝿い男達をかきわけて、男の前に立つと、静かに男がその薄い唇を開いた。



『…一緒に、いく?』

想像していたよりも低く、驚くほど優しい声に私は酔いしれてしまいそうだった。


私は、目を開いたままゆっくりと頷いた。



いま思えば、あの目は確信犯の罠だったかもしれない。

でも「この人ならハマってもいい」と
そう思わせるような視線だった。



これが、ヨシとの出会い。





私とヨシはそのまま本屋を出ようと歩き出した。

周りにいた男達は訳がわからないという風に、次々と叫んで、私とヨシを呼びとめた。

すると、1人が私の肩をグッと掴んで、わざと痛みを加えてきた。

私が歪んだ顔で男の手を払おうとするよりも先に、男は鈍い音と一緒に、体ごと吹っ飛んでいった。

友達に殴りかかったヨシの横顔は、薄ら笑いを浮かべていて、私は少し恐怖を感じた。




同時に、このうえない愛情を瞬間的に覚えていた。


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