王子様との1ヶ月





何も喋ることもなく、無言で手を引っ張って離そうとはしない久遠に抵抗はしなかった





「うわっ」




少しボーっとしていたら、久遠が立ち止まったことに気付かず背中にぶつかってしまった




「お前いきなり立ち止まるなよな」



前を向いたままのアイツの顔を覗こうと思った瞬間に勢いよく振り向いてきた




「おんぶして」




こいつは頭でもおかしくなったのか、自分が何を言ってるのかわかっているのか…




少なくとも俺にはこいつの考えが全く理解出来ません





「早く」



「どうしておんぶ?というか、なんで?」



「面白いから?とにかく恋人の君には断る権利はないからね」




(このサドスティック王子様をどうにかしてください)




渋々ゆっくりと跪いた



「どうぞプリンセス」




「何がプリンセスだよ」って鉄拳をくらってしまった



すぐに俺の背中に乗ったから、よく見えなかったけど…ほんの少しだけ、アイツの顔が赤くなった気がする





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