王子様との1ヶ月
背中に久遠を乗せた俺は、誰もいない廊下をこいつの指示どおり左右に角を曲がっていく
(あれ?一応指示どおり歩いてるけど…)
「ねぇ、道間違ってない?」
そう、体調が悪いから教室を出てきたわけで…
「保健室の道を間違える人なんていないでしょ。僕を誰だと思ってるの、ふふ」
「じゃあ、どこに…」
「いいから言う通りに歩いて」
何も言いかえせないのが少し悔しくて、おもいっきり走ってやったのに…
「うわっ速い、速い。もっと走ってーあははは」なんて逆に楽しませてしまった
初めて気付いたけど、おんぶって顔と顔が意外にも近い
相手が喋るたびに耳から脳にまで響いたり
笑うたびに息が首筋にかかる
(くすぐったい…)