オリヴァー・ジョーンズの事件簿
得意そうにタバコをふかしながら、親指で自分を指す九条さんをみて、あぁ…、こういう大人にはなりたくないと、心底思う。

「この依頼人、いつ来られるんですか?」

「んーと、昼くらいとは言ってたかな。」

「なら、お客様用のお菓子、用意しとかなきゃ!」

確か、台所に茶菓子があったハズだ。
だが、台所をくまなく探しても、お菓子の「か」の字もないくらいにがらがらで、上の収納棚や、食器がしまってある棚も見たのだが、調味料以外、食べ物という食べ物が見つからなかった。

…所長か。

こんな食い意地のはったことをするのは彼女以外、思い付かない。

夜な夜な事務所に忍び込んで、事務所にある食料をなんでもかんでも食べなくても、言ってくれれば何か、作るのに。

馴れ合いを嫌う彼女だから、そんなこと口が裂けても言えないんだろう。

「事務所の食料、からっぽだったのか?」


タバコの吸い殻を灰皿に擦り付けながら、九条さんは呆れている。

「はい…。1つ残らず、あの小さい体のどこに入るんでしょうね」

所長は、どちらかというとチビの僕より小さい。

「まぁ、五日分の食料分はあんだろ。」

はぁとため息をつくとやにくさい臭いが充満した部屋に響く。

「買いにいかなきゃ、行けませんね。とりあえず…」

所長の食費だけで、この事務所の経済状況を圧迫される。
本当に困ったものだなぁ…。
< 9 / 20 >

この作品をシェア

pagetop