ファイブ

日常

「"好きです。ずっと見てました。付合ってください"ああ~ 今日も空が青いっ と」
「え~夕霞<ゆうか>それもなの~っ」

ラブレターとか呼ばれる紙切れは 空を舞って見事燃えるゴミのゴミ箱に入る。

「よしっ」
「"よしっ"ってねえ夕霞…」
「紙屑はちゃんと燃えるごーみっ」
「ああ~っ」

そのゴミ箱に 今度は 十数枚の紙切れたちを一気に放り込む。

「ちょ 夕霞っ あんたがただの紙屑呼ばわりするそのラブレターの山の値打が あんたにはわかんないのっ」

"わかんない"から捨ててるんやんか。

「てゆーか 夕霞今まで一度も彼氏作ったことないんでしょ。なんでなのよ。言い寄る男はこんなにいるのに」
「"なんで"って…」

興味がないからに決まってるやん。

「あーあ せっかくの美人が恋に興味がないなんて。もったいなくて くやしくて しかながないよ。」
「もったいないて… …そういう富美江<ふみえ>も美人やんか。それに彼氏おるし 恋だってしてるやろ。なら富美江のが充実してるねんから くやしいとか思うか」
「"あほっ" これは化粧でごまかしてるだけだよ」
「なんやその"あほっ"て。笑えるわぁ~ 棒読み丸出し!」
「やっぱり そうか ふふ」
「あほやなあ富美江は」

"言い寄る男"かぁ。でもな そんなんがぎょーさんおっても わたしになんか関係あるん。だいいち そいつらの顔 一人も見たことない。顔出す勇気もないなんて。あほらしい。ほんまに好きなら 正面きって現れて "すきや"の三文字くらいばばっとさけんでしまうくらいできるやろ。だから 男なんて信用できひんし 彼氏も欲しいとか思わへん。
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