恋の恐怖症
prologue.
いつからかな。
誰かに嫌われるのが怖くなったのは。
その子が望んだことを必死に叶えようとして、その子が喜んでくれて、わたしに笑顔を向けてくれる度、わたしも嬉しくなったのに。
いつからかな。
自分の意志がわからなくなったのは。
誰かに喜んでもらえるのが嬉しい。
喜んでくれたら、自分も嬉しい。
そう思いこんでただけじゃないのか、ってそうやって問う自分がいる。
昔、そうやって疑問を持って、自分の意志を伝えてみたことがあった。
そのとき、わたしはどんなことを言ったんだっけ。
わたしは、なにがしたかったんだっけ。
――…かすかな意識の奥、眠った記憶を呼び戻そうとしても、なにも思い出せない。
でも、ただこれだけは覚えてる。
わたしが自分でなにかしようとすると、必ずわたしの大事なものが消えること。
……だから、わたしは“そのとき”から、自分の意志を持たないようにしよう、と決めたことを。
この“誓い”は、今もまだ、わたしの心の奥に残ってる――