恋の恐怖症
「…珠洲ちゃん?大丈夫かい?」
「…え、あ、はっはい!あ、いえっ、はい!」
珠洲の意識がオヤジによって再び現実に引き戻されたようだが、俺はそんなことよりも…。
「…えーと、珠洲、だったか?」
「すみません、珠洲です、はい!」
「お前、不安なのはわかるけど、そんな畏まらなくていいから」
仲良くする気はねぇが、やはり初っ端から怖い印象を与えたりしたら、これから一緒に暮らすのにギクシャクしてしまう。
「すみません…」
珠洲は何か勘違いをしたのか、畏縮したように顔をうつむかせてしまった。
あーくそ…うまく言葉が出てこねえ。
別に俺は嫌われてもいい。
ただ、あっちもすごい不安の中来たのがよく伝わってくるし。
それなのに、余計緊張させるのは悪い…そう思って言ったんだが…。
こういうとき、自分の頭の中に浮かぶ言葉が少なすぎて嫌になってしまう。
口下手って得することなんかありゃしねぇな。
「その、なんていうか…そんな風に反応されても、こっちは対応に困るっていうか、なんて言えばいいかわかんねえっていうか…」