恋の恐怖症
「…ごめん、なさい」
…俺はアホか。
「迷惑…ですよね」
余計にこいつを落ち込ませてどうするんだよー…。
こういうタイプのやつは、絶対に思い詰めるタイプのやつだってわかるだろうが…。
「あーと、だな…」
「ハル、珠洲ちゃんを怖がらせちゃだめじゃないか!」
横でやけに静かだなと思っていたオヤジが、突然俺の頭を小突いた。
「な、なんだよ」
「第一印象は大事なんだから、ちゃんとしないとだろうが?」
「う゛…」
オヤジの言ってることは正論だ。
そんなことできたら苦労しねえ、とオヤジを睨んでみるが、オヤジは意に介したところもない。
「あ、あの、わたしは…」
珠洲が何か言おうと口を開きかけたが、それは…オヤジの爆弾発言によって、それは遮られた。
「よし、ハル!しばらくハルの部屋で珠洲ちゃんと2人きりで話しといでよ」
「…は?」
なぜ、そんな話になる?
そう思ったのは俺だけではないらしく、珠洲も口を半開きにしてぽかんとしている。
「オヤジ、なにいって――」
「問答無用だよ、ハル。珠洲ちゃんもいいよね?」
「え、あ、あのっ…」
俺も珠洲も反論する間もなく、オヤジは俺の部屋の中にぐいぐいと俺たちを押し込み、ぱたんと扉を閉めてしまった。
――そして、この気まずい今の時間にいたる、というわけだ。