恋の恐怖症
episode.1
新しい家族
○珠洲side○
「――え、再婚?」
その知らせを聞いたのは、1ヶ月も前のことだった。
「そうなの。相手、すっごくいい人なのよ!きっと、珠洲も気に入ると思うわ」
薄々、ママに彼氏ができたことはなんとなくわかっていた。
ママはとても恋に積極的で、まだ30代後半には見えないほどの若さだから、寄ってくる人が多いため、恋人を紹介されるのもよくあること。
わたしはそのたびに緊張しすぎて声が出なくなって、よくママの彼氏さんを困らせてしまう。
――わたしは“あること”がきっかけで、声がなかなか出せなくなってしまったことがあった。
今はリハビリを重ね、少しなら出るようになったけれど、緊張したり、すぐに出にくくなってしまうから。
……これ以上は、迷惑かけたくなかったのに。
薄々は気づいていた、けれど…
……結婚までは、気づいていなかった。
「付き合うんじゃなくて…結婚?一緒に、住むの…?」
「大丈夫よ、相手も珠洲が人と話すの苦手ってわかってるから」
わたしを安心させるように、ママは優しく諭してくれようとする。
「で、も…」
「…ごめんね、私だってわかってるのよ。珠洲に今まで迷惑かけてきて…“あのこと”で、珠洲がこんな風になっちゃったのもわかってる」