恋の恐怖症
○珠洲side○



「えっと…ここ、だよね」






渡された地図を見ながら歩いてきて数分。






印がついた場所に到着した。






目の前にある家の表札には、『斎藤』と書かれている。






間違いないことを確認してインターホンを押すと、今まであまり感じなかった緊張が次第に湧き上がってきた。






もし、新しいお兄さんとうまくいかなかったらどうしよう。






わたしだけならまだしも、ママがせっかく掴んだ幸せを、わたしのせいで失ってしまうということだけは絶対にしたくない。






変なことをしないようにしなくちゃ…。






『――はい』






わたしがあれこれ考えを巡らせていると、インターホンから、優しげな男の人の声が聞こえてきた。






「あの、珠洲ですが…宗一郎さん…ですか?」





『無事着けたみたいでよかったよ、珠洲ちゃん。玄関の鍵は開いてるから、入ってきていいよ』






「はい、わかりました」






ガチャッとインターホンが切れる音が聞こえてから、わたしは落ち着くように深呼吸をした。





「よし…頑張ろ!」






そして、勇気を出して、玄関へのドアを思いっきり開け放った。



















「お邪魔します…」






「いらっしゃい、よく来たね」





ドアを開けて中へ入ってみると、前会ったときと同じ、優しい微笑みを浮かべた宗一郎さんがわたしを出迎えてくれた。





あ、挨拶しなきゃ…!







「あの、こ、これからお世話になります。よろしくお願いします!」






ばっと宗一郎さんに頭を下げると、宗一郎さんは困ったように苦笑してしまった。






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