天翔る奇跡たち


『それが、答えです。さあ、帰りましょう、後少ししたら、完全に白竜になってしまう。金竜にならなければ、儀式に間に合わない』

 ディノーディアさんは、抵抗するかのようにわずかに頭を振った。

「おかあさま。私はこれで良いのです。私はおかあさまのような白竜に……なりたい」

『だから、それは儀式の後だと……』

「私だって、もう、わかっているのです。ただの人間がどのようであるか。どのようにー」

 彼女は一息ついた。

「かれらが勇敢かを」

『勇敢? 人間のそれは蛮勇だと何度も教えたでしょう』

「いいえ蛮勇ではありません。彼らを見ていればわかります。いいえ、わかりたいのです。人間には人間の愛が、正義が確かにあるのです」



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