天翔る奇跡たち


『奴らめがおまえに何を施しましたか』

 ディノーディアさんは、先を遮るように声を張り上げた。

「かれらは私を助けてくれました! 誰一人……裏切りをはたらくものはおりませんでした!」

『口答えはおやめなさい。その髪の醜いこと……』

 ディノーディアさん、今度はー今度こそ、強く否定した。両手で髪の毛の房を握りしめて。

「醜くはありません。私はおかあさまのようになりたいのです」

『人間は白竜を縁起が良いと勝手に解釈し、狩り、たてがみを毛皮にする、鱗も剥いで武器防具などという争いの道具にするのです』

 ふわん、とさわやかに鼻孔をくすぐる香り。



< 109 / 225 >

この作品をシェア

pagetop