天翔る奇跡たち


 人影もなく、だけど、たしかに何かの気配がする。風の音? いいえ、これは違う。月のない夜に星空だけをバックに巨大な何かの呼吸音が近づいてくる。

「来たよ、グリフ」

「うん」

「……血が欲しいか。この身に流れる竜の血が」

「欲しい!」

 と、グリフ。へえ、意外! 何にする気?

「欲するか。では何に使う。富か、魔法か、地位か」

「薬代さ」

「……なんだそれは」

「ガナッシュがあなたのお姉さんの血で、一回怪我をしたんだ。切り傷だった。でも、二回目よく見たら傷は癒えていた」


 よくそんなこと見てたわね。あたしは気付かなかった。




< 139 / 225 >

この作品をシェア

pagetop