天翔る奇跡たち
「ち、危ない、あぶない。これがなかったら命までもってかれていたかもしれんな」
暗がりで薄気味の悪い笑みが、浮かんでいる。覆面の上に黄みがかっている三日月の目。
「な、なにあれェ。浮いてるっ」
あたしが言っていると、男が得意げに、
「ふはは、これはドラゴアのマントと言って、要するに火炎放射がきかんのだ。どうだ、いつでも招いてやるよ。ドラゴニアの谷でな」
「うるさーい! 私はおまえのようなはげちょろけを、主にもつ気はなーい!」
男は獲物を狩る目でにらみ返した。
「強気でいられるのも今のうちだ! ハッ」
男は自慢のマントを大きくひらめかせた。
ンゴッ、とディノーディアさんの火炎が追いかける。それでも男は笑うのをやめない。
ちょっ、はげちょろけなんて言い過ぎ、ディノーディアさん。
弁髪の、というよりは*なんだけど、なんとかひとの目にはそう見せたくない、ていうのがまるわかりな変な髪型。