天翔る奇跡たち

 食べる? よりにもよって、ダイノダイアさんのご同胞を? まさか……

「えーと、一応、そういう意図ではない……のかどうか、確かめに行って参りますね?」

「早くしてくれ!」

 うわ! 金竜さん達がピンチ! 力一杯、抱きすくめられてるよ……。
 
 今にも死にそうッて顔で、ジャガーさんは言うけれど、待って待って、そういう自分の身は可愛いの? もしそうだったら困ったひとだ。

 あたしはそろっと後ろを振り返る。

 彼は何事かつぶやき続けている……呪文?

 単に不気味なのか、本気の呪詛なのか、わからないところが怖い。

 特にこのひとの場合。

「……ん、よし。おまえはキイチゴ味な。ん、で……っちのは、と……トマト味、と」

 んんんー? 味ィ? ガナッシュ、味付け上手は素材に秘密有り? 何すればいいの、っどうすればいいの? あたし。
 
 食べられちゃうの、金竜すゎん……ガナッシュの、ばかーあああ! よりによって依頼者の身内を!

「なにしてんだよ、そんな入り口で」

 急にかけられた言葉に、あたしはぎっくーんときて立ち上がってしまった。

 身を隠しているつもりが、かんぺきに気取られてたみたい。

 で、でも今ならまだ間に合う! 

 ……かも知れないし、そんなこともないかも知れないけれど! とにかく撤収!

「アップル……おーい、アップルー! あにやってんだー?」

 微かに聞こえる彼の声に混じって、薬のような香りがした。

 ガナッシュ、ごめん! 裏切ってごめん、信じられなくって、疑って、依頼者とはいえ、相手の手駒になるようなまねして、ごめーん!

 急いであたしはジャガーさん達のところへ。






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