天翔る奇跡たち
グリフは例の二人の情報をつかもうと、必死になっている。とてもじゃないが今、この子を差し出して「オムツ取り替えて」なんて、言えないよー。
「おっ、アップル。頑張ってるって聞いたぞ。なんか、俺にできることあったら……って?」
めちゃくちゃさわやかに現れて、瞬時に笑顔を踏みにじられたのは、グリフだった……
あたしの腕からすっぽ抜けしたのは、はい、金竜さんの、オムツ。それはグリフの頭上へ飛んだ。
「オシメ?」
グリフは金竜さんを抱き取って、こういった。あたしはうんうんと頷いて状況を見守るしかできない。非常に無責任なんだけれども。
「ちょっと、かして」
ええっ、やっぱり? グリフには、申し訳ないんだけれども、彼といると、こういった状況はしごくフツーに、あったりまえに起こるんである。
どんなカミサマが彼の頭に祝福を垂れたもうたのか。いいひとだ……神。
「いろいろ大変なんだけどね、オレも」
「ごめんなさい、いつもいつも」
「おいおい、こんなことなんでもないってー。冗談だよ、冗談」
彼の強がりがあたしの胸を締めつける。これであたしが握りしめてるのがオシメじゃなかったら、なんて状況も、たびたび起こる。
なのになんでハートは届けられないの? あたしに覚悟が無いからじゃあないのか?
いや、でもそこはフツーに頑張ってる。彼の方が、あたしのほんのちっぽけな頑張りなんかより、遙かに上をゆくんだ。常に。
そこは当たり前にとっといて、めがねを付けてオシメの代え方覚え中。うーむ、これだからグリフはすごい……一方であたし、己を顧みてへこむ。
「っと、わかった?」
ううん、ぜんぜん。見てなかった。なんて言うとだれだれになっちゃうから、
「自分なりにやってみる」
としか、言えないんだよ……十年早いんだよ、あたし。両腕を突き出して、たたむまねはするけど、もう、涙目だよ? 本気で助けてって、言いたくなる。