天翔る奇跡たち


「ええー? こんなのカンタンだよ。変に気負わなくてもさ……」

 そこが、わかんないのよ、初心者レベル一にとっては。

 ううん、あたしって子守レベルマイナスなんじゃないだろうか? 

 つぎつぎと嫌な想像をして緊張したり、脱力してしまったり。

 こういうストレスっていうのは、身近で余り、例を見ない。

 って、少し世間に疎いのかもしれない、あたしって……。

「それにしても、かなわないなー」

と、思って見てたら。

 ん? グリフ……

「その布地……」

 どこかで見たと思ったら。

 洗濯したばっかりのマントじゃない? 

 布地に使っているのは……グリフ、それはボケなの? 突っ込みを待ってるの? あた
し、どうしたらいいの? 

 言いにくい。

 マントがオムツになってるなんて。

 あー……

「えーと、あの、ね……グリフ。今、別の布持ってくるから、あの、短気を起こさず聞いてね。マントがオシメになってるよ」

 ……。

「本当だ……」

 やっぱり天然だ。

「でも、いいんだよ。もうそろそろ代えどきだったから」
 
 パッとナイフで裾を裂いてしまうと、グリフはにこにこして言った。
 
 そんな、いくらなんでもグリフ、あなた防寒着ほとんど持っていないでしょう? 

 あたしは思い当たる。

 最近、ノミの市で気に入って買ったマントが、洗えば洗うほど色落ちしてムラが出て、ほんの数週間で見るも無惨に。

 今ではすっかり褪せてしまったのでがっかりしてたっけな。






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