天翔る奇跡たち
わりと近く、机に乗っていた金竜さんが肩に、飛び付いてきて言った。
軽いな、体重。
それよりも、
「ワレワレハ、スデニ一蓮托生ナノデス」
覚悟を、要求された……泣いてもいいかな?
今日辞職したい。
今がいい。
どうか助けて。
こんなところで、とか根性がどうとか、ガナッシュなんかは怒鳴るだろうけれど、そのガナッシュもどきが十名近くいるんだよ?
あたしがどうこうできる話じゃない。
参るよ本当。
普段からガナッシュには言い負かされてばっかりいるンだから。
って、これは愚痴か。
「君、仲間だと思っていたのに、彼らのこと何にもわかってないんだね。ううん、知ろうとしてない。自分だけは安全な所にいて」
あたしはグリフとガナッシュに対して、理不尽なこといっぱい考えてる。
と金竜さんは言った。
「……そうかもね」
でも、でもね、グリフは言ってくれた。
このチームはファミリーだって。
あたしうれしかったんだよ。
いきなり天涯孤独になってしまった自分自身を立て直すまで、つらかった、苦しかった、哀しかった。
なにより心細かった。
誰かに打ち明けて、大変だったねと、一言でいいから、言って欲しかった。
そうしたら、なにもかもが悪夢だっただけだと思いこめたのに。
かといってこちらに触れられてもつらいだけ。ヤマアラシだ。
だけど、そんなことじゃあ生きてゆけない。
だからすがったんだ。
グリフとガナッシュに。
きっと役に立つからと言って、仕事を同じくして、一緒に過ごせる時間を袖ひっぱって話を聞き、何処へ行くにも挨拶して、仲良しに。
結果、ガナッシュは第一印象ほど馬鹿丁寧じゃなかったし、グリフは格好が良いだけの男の子でもなかった、ということが判明した。
うん……あの二人にはだれも近づこうとしなかった。
二人とも自信家でやっかまれてた。
不思議よねー。
男の子に嫌われると、女の子にことさらもてる。
逆にあたしと居ると、まあ、仕事関係者とのトラブルが減ったみたいだから感謝されても構わない。