天翔る奇跡たち


『俺は三つにもなってなかったあの瞬間、ひとを傷つけることを選んでしまったんだ』

『父は言った、おまえはいつか国のために戦う者になるだろう、と。だけど俺はそんなの望んでない。戦って勝つとは限らないだろ?』

 珍しい。グリフ、まんまの否定的意見! 

『でも、グリフは数限りなく、あたし達をも含めて、ずっと、守ってくれたよね。ひとを、守ってきたよね』

『剣を持つことはキレイ事じゃない。俺はひとをこの手で傷つけて、ひとを護っているつもりでいたんだ。……なさけなくて』
 


『グリフは! そんなことを言って、逃げる気なの? みんな、あなたを信じてきたのに。ここまで一緒に来たって言うのに』

 手を打つ音がした。ガナッシュだった。

『おれはそんなおめでたくもねーが、極論で言えばそうだ。そんな迷いに揺らぐ剣はな、危なっかしくてしょーがねえ。捨てちまえよ』

 あっと、まってまって! 今この状態って、もしかして危なくない?

 あたしは頭を大きく振って、嫌な思考を吹き飛ばした。



 大体、人の生き死にを……大事なことを忘れていない? 彼らに課せられた試練とは、ほんの小さな子供の頃の話だってことよ。必要ないのよ。全部が全部、グリフが引き受けるなんて。





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