天翔る奇跡たち
 あたしだってね、好きな場所へいく権利があるわけよ。そこでね、あったことをいちいちいうかっていうと、実はそうでもない。

 だから、ゆとりなんかもできるし、また次の日、あたしは外へ出て行けるんだ。

 目も眩む青春。目も眩む日常……

「目もくらむ、欲望、とか?」

 あたしはそこでぱったり、ノートを閉じてしまった。後ろからガナッシュが見るんだもん。

 恥ずかしいよ。

「ああ、やめといた方がいいな。正解だ」
 
 と、言っておいて、キシシ、と笑う。あたしが睨むと馬鹿な顔をする。顔芸ってやつ。

 萎えるな……もう。あと少しだったのに。

 フレーズを考えるとき、一気書きするんではなく、自分を乗せたいんだけど。まるで文にもなってないとこだけ見られても……。

「へったくそ」

 って彼は言う。違うのに……



「あっぷるうはすてきー、かわいい、すてきー、あっぷるうはやさしい、うれしいなー」

「ははっ、なんかドロップスのほうが楽しい感じだな。詩人としてはどう? そのうち売りに出す?」

「ぷぷっ、きっと儲かるぜー、フツーに仕事するよりも!」

「ぐりふは、やさしいー、いいこーやさしいー、女の子にもてるー、じまんしいー、ぐりふはいいこー、やさしいー、いいこー、たのもしいー」

 グリフはうっとうめいてドロップスを抱きしめた。

「なんて、いいこなんだ。ドロップス、俺、こんな心にしみる歌、聞いたことない」

「おいおい、しっかりしろよ。こんな幼児に、もてるだの、じまんしいだの、語彙があると思うか? まねだよだれかの。な、アップル」

「別に……ドロップスは幼児なんかじゃありませんー。日々成長しているんですからね。それにあたしは教えてないよ、なーんにも」

 えーっ、と不審気な声が挙がる。なんで?

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