天翔る奇跡たち
side:アップル

「俺がたとえドロップスを助けたいなんて言っても、誰もノって来なかったと思うよ。気まぐれか、止せよって」

 いやほんと、ってグリフは、いつもと違う笑い方をした。

「だからかなあ、君には安易な気持ちになれない。みんなの気持ちを直接触れることなく動かしてしまったんだから、すごいよな」

「グリフ、あたしをなんだと思ってるの? やり直し!」

 といって、廊下に向かって回れ右。
 
 とんと背を押すと、彼は振り返ろうとしていた頭をうなだれて、去っていった。

 去っていったんだ……

 グリフ……あたしはバードだよ。

 心の声を言葉にするのが商売なの。

 だけどそれだけじゃあない。

 誤解を恐れず、言ったなら、心の中の気持ちを隠すことだって商売の内、なんだよ? 

 ……見抜いてよ。

「あたしだってねえ、普通の女の子よ? 嫌いなひとのご飯なんて、毎日作れると思う?」

 グリフが見せなかった涙。

 彼が隠してた心。

 今、届いたよ。

 だから、はやく帰ってきて……その傷をあたしに癒させて。


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