天翔る奇跡たち
「要は、一晩、ゆっくり眠れれば、少なくとも道行きの半分は楽になるんだけれどなあ」
グリフは人ごとのように苦笑した。あたしが倒れた(……そうになった)のも、ガナッシュがイライラしてるのも、原因はぜーんぶ、この睡魔のせい。
「本当に眠いのであればどこででも眠ればよいだろう。幸いここいらには毒物を持つ虫け
らや獣もよりつかぬ」
いや、だから何でそんなに訳知りなの?
「このあたりには滅多に草が育たぬ。植えたところでたちまち枯れてしまう。身を隠すものがないので砦としても最高だ」
「あ、そういえばそうだね」
とグリフが間抜けっぽくうなずく。
「ま、難があるとすれば夜陰に紛れて、先ほどのような者が寄ってくるのだが、これも問題無いと言える。理由は……」