天翔る奇跡たち
 

 あたしは一気に脱力した。これで、これで……仕事ができる。やった! やったああー!
 
 これでお腹キュウキュウいうばっかりの毎日から解放されるんだああー。

 うれしくて、うれしくて、胸にいっぱい空気を吸い込んで、その途端、あたしは意識を失ったのだった……



 どこだここ……ああ、いけない。よりにもよって、仕事の最中で何やってんだあたし!

 頭痛た……って、なあに? ぴしゃ、と額に冷たい感触。目を開けるとなんと!

「おっとと、駄目だよいきなり動いちゃ。バランス良いとはお世辞にも言えないからね」

 グ、グリフ! なによあたし、お荷物扱いー? また貴重なお水をっ、ドロップスがこぷこぷと惜しげもなく布に含ませて!

「あい!」

 と差し出すのを受け取って、グリフがまだじっとしてろっていう。自分はあたしの体ごと引き受けて、額に布を当ててくれる。やさしい。

 でもあたしは彼のそんなやさしさがつらかった。

 だって、あたしはティラミスさんじゃ、ないもの……。



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