天翔る奇跡たち


 きりきりまいの番兵さんたち。別にいつもの事だけど。

 ひきかえ、あたしはなんとか正門から入れやしないかと、未練たっぷりにその様子を、見るともなしに眺めていたんだけど。

「おい、アップル、こっちの番兵も正門へ向かった。がらあきだぜ。チャンスだ、ちゃんす」

 彼は風に紅い長髪をなびかせながら、小気味よさそうに笑んだ。

 口角をこれでもかとつり上げて、目を細める。

 まるで獲物を咀嚼にかかったライオンみたい。

 うっわ、こわい。久々に見てしまったこの顔。

 べつにいつものことだけど。

 仕事の時、ガナッシュは意識的にこういう顔を作るみたい。

 おかげさまで、いつもこのひとと一緒にいれば大丈夫、って思える。

 ムードメーカーっていうのかな?









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