天翔る奇跡たち



「俺、見てくるよ。いくらリングの力があっても、あいつ自身が無敵ってわけじゃないから。苦戦してるか、怪我を、負ってるのかも」

「まって、まって。グリフだって怪我してるじゃない。いくんなら、あ、あたし」

 ぐったりする手足を動かして、懸命に立ち上がった。膝ががくがくいった。グリフは振り向かない。

「いや、こんなことで親友を見捨てられないよ」

 彼はぎゅっと革製のグローヴを装着しなおした。あれって、痛いよ……ね。あたしは想像しただけで自分の体が痛くなる。手のひらがずくんずくんとうずき出すのを感じた。

「いやっ!」

 あたしは何かを言おうとしたが、グリフは、大丈夫だから、とかなんとか言って谷の裂け目の方へ向かおうとする。あたしは思い切りその腕を引っぱった。


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