ワーホリ!メタルドラマーが国際結婚?
車内はそのビターな香りと戦っていた。

エアーズロック育ちのオージーでさえ


「高須クリニック行けよ!」


と、思ったに違いない。

車内にいる者全てを敵に回した
ビターちゃんは、こんな激戦地にいても
ダンスを決して止めなかった。

首を使ったダンスならまだマシだが
肩を使って脇をスリスリの
ダンスがまた始まった。


「この踊りの時がくせーのなんの!」


「もうやめてけろ~」


俺は耐え抜いたおしんの様に
怒鳴りたい気分だった。

俺はサマーはどう思っているかと思い
聞いたが、こういう人物はどこにでも
必ずいると言い、慣れているせいか
俺ほど気にはしていなかった。

ゴスペルを歌い続けて30分、
ダンスを30分、1時間という
ビターなひと時を過ごしていると、
ビターちゃんの歌声が
聞こえなくなっていた。

二重後頭部もブルブルいっていない。

車内が静まり返った。

みんなどうしたのかと聞き耳を立てている。

すると突然「ぐあ゛~」と、
怪獣の泣き声の様な声が聞こえてきた。

俺は一瞬テレビの画面を見たが
ウルトラマンはやっていない。

どういうことかと思ったが、
なんてことない、
今度はいびきをかきはじめていたのだ。

やはりビターちゃん、
怪獣の泣き声の様ないびきも爆音だった。

しかしまだ「ガオーガオー」と
火を吹かないだけマシだった。

結局2時間近く怪獣の泣き声が
止むことはなかった。

その間、俺もウォークマンを聞きながら少し
眠ることはできたが寝不足の為か目が重い。

音楽を聴いていても実際には聞こえない
のだが「ぐあ゛~」と耳鳴り様に聞こえる。

その為、普段なら寝れるはずが
その耳鳴りで熟睡できずにいた。

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