ワーホリ！メタルドラマーが国際結婚？

エピソード４４：ピーナツバターと呼ばれた船長

翌日、クジラを見に船に乗り込んだ。

天気は「くじら日和」
と言ったら良いのか晴天だった。

きのうの寒さがウソみたいに
太陽が照りつける。

船内に入ると古ぼけたテーブルに紙コップ
に入ったリプトンの紅茶とビンボーくさい
クッキーが無造作に置いてあった。

まるで「勝手に食いやがれ！」
と言っているようだった。

船には２０人ほどのツアー客が乗り込んで
いて、みんな甲板に出てくじらとの出会い
を待ちわびている様子だった。

そして良いスポットが見つかったらしく
船長が船を泊めた。

船長が甲板へやってきて無言で客を
押しのけ一番前に陣取った。

すぐさま望遠鏡でくじらを探し始めた。

俺はクジラよりこの船長
の方が興味があった。

いやしくも客である俺たちを押しのけて
一番前に陣取ってしまう様は
こっけいであった。

その船長はかなりの年配で杖をついていた。

痩せていて、髭はボーボー鼻毛ボーボー
耳毛ボーボー、クルクルに縮れた髪の毛を
隠すようにフィッシャマン・ハット
を被っていた。

パイプが似合いそうな初老の船長だった。

そして一番目に付いたのが、唇の端に付いた
ピーナツバターだった。

俺はてっきりピーナツバターだと
思っていたのだが、この暑さのせいか？

それともただ単に水分を
取らないだけなのか？

口が渇きすぎてピーナツバター状の
未確認物体が唇の端に付いていたのだ。

その瞬間、俺の頭のジュークボックスから
「ネーバー♪ネーバー♪」ハートの曲、
NEVERが流れ出した。

俺は船が揺れていることもあり、胸焼けを
起しそうになったが、なんとか耐えた。

俺は気を取り直し、
気分転換に海の方を眺めた。

しばらくすると、ピーナツバターが望遠鏡
を見ながら「イ～～～ハオ！」と、
雄叫びを上げた。