ワーホリ!メタルドラマーが国際結婚?
「英語が分からなかったら日本人スタッフに聞いて。」


ノリさんは自分の持ち場へ戻っていった。


「こいつと二人で大丈夫か?」


と思っていたが、間もなくミックは英語でドシドシ話しかけてきた。


「どこに住んでる?車持ってるか?女はいるのか?」


うるさい奴だったが、面白い奴でもあった。

いつも意味のわからないジョークを言っては、
俺にも「言ってみな!」と、ヘンな英語を教えた。

こっちも覚えた単語とジェスチャーを使い笑わせたりした。

例えば赤ちゃん用の服をミックの体にあて、「スーツ・ユー(似合うね。)」とか、
服の数を数える時「ワン、トゥ、スリー、フォー、ファイブ、セックス」
といったくだらない事にも大喜びしてくれた。

ケアンズでは言葉が100%通じ合えないのに、なぜか構えずに自分らしく振舞えた。

この国は自分を出せば仕事も楽しくなるように感じた。

2,3日もするとすっかり打ち解け、外に一緒にタバコを吸いに行くようになった。

たまにタバコをねだられたが俺がない時はくれた。

ミックだからなのか分からないがオージーと仕事するのが楽しかった。

毎日仕事場に行くのが楽しみだった。

日本ではあまり自分の主張や自分のことを話すと嫌がられるが、
逆にこっちでは自分のことを話さないと誰も相手にしてくれず孤立してしまう。

日本人のスタッフの中にもオージーと打ち解けず、
日本人とばかりつるんで英語も話せず、何の為にオーストラリアに来たのかという連中もいた。

彼らの生活は昼間は日本人と仕事して、
家に帰れば一緒に住んでいる日本人のフラットメイトとおしゃべり。

オージーと接する機会などない。

遠い国に来て日本を求めてしまってはもったいない。

一週間ほどして仕事の帰り際、ミックが「ウチに来いよ」
と言ったので、暇な俺は喜んで行った。

部屋には洗濯していない服が散らばり、ポルノの写真が張られ、
いかにも男臭い部屋だった。

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