ワーホリ!メタルドラマーが国際結婚?
するとミックは片言の日本語で一枚の写真を見せてくれた。


「かわいい?」


と満面の笑みで聞いてきた。

良く見ると日本人だった。日本人に興味がなかった俺は


「So So (まーまー)」


と答えるとキースは不機嫌な顔になり、独りでエロ本をペラペラめくり始めた。


「これ誰?」と聞くと


「マイ・ガールフレンド」


「えっ、彼女?」


やばい!悪いこと言ってしまった。

しかし俺は英語で弁解する事も慰める事も出来ず、
ひどく長い沈黙が続くだろうと思った瞬間


「レッツ・ゲラーリ・ヒア!」


ここを出ようと言う。

なにかヤバイ雰囲気だ。

原っぱに俺を連れ出し、決闘でも申し込まれたらどうしよう。

しかも何人かのダチも来て脅されたら・・・

すっかり打ち解けたとはいえ、知り合ってまだ一週間しか経っていない。

もしかしたらミックは打ち解けたとは思っていないかもしれない。

俺はただの知り合いの一人でしかないのだ。

ミックは家の扉を「バタン!」と勢いよく閉め、さっそうと歩いていく。


「いよいよ原っぱへ行くのか?」


すると近くの小さな店に立ち寄り、後ろからついてくる俺の方へ振り向いた。

俺はドキッとし、引きつった顔で恐る恐るミックを見た。

するとミックはアホみたいな顔で


「チョコレート・ドーナツ食べる?」と聞いてきた。


あまりの肩透かしにホッとし、徐々に笑いがこみ上げてきた。

俺とミックの頭の中がまるっきり逆で、
俺は「決闘」ミックは「チョコレート・ドーナツ」
あまりのギャップにさらに笑いがこみ上げてきた。

「やばい!決闘だ!」と、怯えていた俺の隣でミックは

「あ゛~チョコレート・ドーナツ食いて~」と思っていたのか?

俺が言った「So So」は全く気にしていなかったということなのか?

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