大好きが溢れるまで
聞き返された私は、何故か焦ってた。
「私は別に、気に、しないよ?」
「じゃ、いいじゃん。噂なんて」
あ、いいんだ…と内心嬉しかったりする自分に気付かないフリして。
私と中根はその後、いつも通り話しが逸れたり、他愛のない話しをした。
この時…気付かないフリをしたのは、気付きたくないから。
自分でも、わかってたんだ。
少し…ほんの少しだけ、気持ちが揺れてたこと。
でも、そんな自分の中の気まずさもあっという間に消えちゃった。
理由は、2年になってからいつも亜美と2人で寄り道した公園。
いつも中根と話してる公園の近くだけど、そこにはベンチと小さな滑り台しかない。
その公園で、いつも通り亜美と話してた、5月の中旬。
「あ、仲井だ」
久々に近くで聞いたその声は、飯田のものだった。
部活が終わったテニス部たち。
その中に飯田と中根もいて、公園で練習をし始めたんだ。
吃驚した亜美と私は、顔を見合わせた。
「ね、まなこ」
「な、なに?」
「これ、飯田と話せるチャンスだよ!」
「…が、頑張ってみる!!」
そう言って、テニスボールを打ち合ってる飯田の所へ駆け寄った。
「ねぇ、ねぇ」
話し掛けても、打ち合いを止めることはなく、顔を見ずに返事をした飯田。
私の心は少しだけ、傷付いたり。
「なに?」
「いつもここで練習してたの?」