大好きが溢れるまで
February
中学1年、2月。
世間はバレンタインってシーズン。
みんな友チョコを張り切って作る訳で、私もその1人。
でも、心の奥底では、友チョコ以外にも"あげたい"とか思ってたり。
「あ~、もうバレンタインだってのに…」
「何々~?」
授業が終わって、理科室掃除の最中。
同じ班の飯田がほうきの先でつっついてきた。
「いや、今年は本命あげる人いないなーって」
あ、なんで本音言っちゃったんだろう?なんて思ったけど、束の間。
まぁいいか、と自分の中で流す。
飯田は不思議そうな顔で私を見るけど、私はほうきの先でつつき返した。
「あれ、好きな人いるとか言ってなかった?」
「それが、いないんですー」
嘘つくのは嫌い。
だけど、こればかりは本当のことなんて言えなかった。
言えるなら言いたい。
"好きだよ"って、飯田に言いたいよ。
だけど、今の私にはそんな勇気はない。
ただ、想ってるだけ。それだけで、私は充分。
「そうっすか」
「そうっす」
他愛もない話しも、私にとってはハッピーになれる瞬間。
私にとってこの瞬間が学校に来る楽しみの1つ。
勉強は好きじゃない、だけど飯田と話せるから。
そう思えるのは、私が恋に溺れてる証拠かな?
私はただ、想ってるだけでよかったのに。
掃除が終わると班長の私は先生に報告をした。
誰もいないはずの教室に戻ると同じ班の梨香がいた。
「あれ?報告は終わったよ?」
笑顔で言ってみるけど、梨香は真剣な顔で返事をした。
「まなこを待ってたんだ」
その瞬間、冷たい風が私と梨香の間を通り抜けた。