大好きが溢れるまで
「あのね、話しがあって」
普段大人しい梨香は、いつもよりも生き生きしている気がした。
人並みより細い梨香の目が、それをより強調させた。
「どしたぁー?」
いつものように振舞ってみるけど、梨香はあまり笑わない。
少しためらってから、梨香は口を開いた。
「まなこって、飯田が好きなの?」
「え、なんでそうなるー?」
笑って返す返事も、スルーされちゃって、少し動揺する私。
私ってわかりやすい人間なのかなぁ…。
「最近飯田と仲いいよね」
「嫌いだけどねぇ…構ってあげてるの!」
ハハハって私の笑い声が静かな教室に響く。
なんだよぉーこの空気?と言いたいけど、今は言っちゃいけないよね。
「まなこは嫌いなんだ。私は飯田が好きだよ」
「ほっほー!マジで!?応援してるよぉー!」
「ありがとう…」
梨香の顔が真剣な顔から少しは和らいだものの、少し冷たい態度。
私はそんな態度にも動じない、だって喧嘩になるもん。
その日、部活もサボって、私は1人で道を歩いた。
春が近付くと肌に感じながらも、私は喉がぎゅうっと苦しくなった。
その苦しさはきっと、梨香に本音を言わなかった後悔。
梨香があんなにもはっきりしている子だと思わなかったから。
「ただ…好きでいたいだけ、なのに」
そう呟いても、風にかき消されただけだった。