ヤンデレな人たち
「お帰り。強情な花婿さん。あなたの婚約者は人食いさ」



 奇妙な歌で青年は意識を取り戻し周囲を見渡す。見知らぬ小屋に閉じ込められているのかもしれない。



 隣にはインコが一羽いただけだった。



「もうすぐあの女は帰ってくる。そこに隠れて見ていきな」



 インコに促される通りに青年は近くの樽の陰に身をひそめている。



 間もなく彼女が帰って来た。そこには一人の少年を抱えていた。すぐに少年をテーブルの上に横たわらせる。意識を取り戻した少年はじたばたと抵抗する。



「やめろ!俺に何をする気だ!ふざけるな!」



「抵抗なんてダメよ。あなたはもう逃げられない。籠の中の小鳥さん。大人しく運命に身をゆだねなさい」



 そう言って彼女は何か色のついた液体が入っている瓶を、彼の口に突っ込ませる。下から生まれる気泡が彼の体内に入っていく目印になっている。もうすでにボトルの四分の一まで減っていた。



 目が良い青年はラベルに貼られた字を見てびっくりした。



「ウォッカ……。やめろ。そんなことをすれば彼が死んでしまう!」



 抵抗していた少年だったが、すぐにその抵抗も大人しくなる。文字通り酒におぼれて死ぬか、濃度の高い酒を大量に飲まされ死ぬか。どちらかの選択しか少年にはない。



 そして動かなくなった少年の衣服を少女ははぎ取って、五体を切断。酒漬けとなっている内臓は切り取って窓から投げ捨てた。そして塩をかけて美味しそうに頬張った。



「う~ん。さすが。私の予想通り美味しい味出してるわ。これは十本指に入るレベルね」



 うっとりとした表情を浮かべながら少年の首から上を持って棚に飾る。すでにそのコレクションは二十ほどあり、一番古いものとされるものは半分腐敗し頭蓋骨が露出している。



「さてと、そろそろあの人も眠りから覚めているはずだわ。どこを逃げ回っているのかしらね?――ここかしらッ!」



 彼女の背ほどある大剣を片腕で振りまわす。横薙ぎで切ったのは青年が隠れていたたるだった。とっさで身を低くして奇跡の回避を見せたが、それまでだった。



「さあ、あなたの味は何本指かしら?」
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