ヤンデレな人たち
「ねえ?誰なの?その女は誰なの?」



 少年が差し向けた手は自分にではなく、別の少女に向けられ楽しそうな笑みを浮かべていた。自分としてはそんな光景見たくもない。



 その手は自分だけにしか向けられているのではなかったのか。その笑顔は自分だけの物ではないのか。全て嘘だったのか。



「ちょっとそこの女!離れなさいよ!」



 無理矢理繋がれた手をはがそうとするが、その手は中々離れない。そうこうしているうちにマッチの炎は消えてしまった。



 相手は誰なのか。自分よりも可愛いのか。もうここまで来ると気にせずにはいられない。自分だけの彼を取られてなるものか。



 マッチ棒を十本使ってようやく女と少年を引き剥がすことが出来、そしてもう十五本でその女の顔も分かった。そしてどこの家なのかも三十七本目のマッチを使って判別することが出来た。



 もう籠に入っているマッチはもう数箱しかない。しかし、『アレ』をするには十分残っている。



 もう見境が付いていない。マッチに映ったのは所詮幻影だというのに少女にはもうその区別が全くなくなっている。ぶつぶつと独り言も言って通りがかる人が怪訝そうな表情で少女のことを見るが当の本人は気にしていない。否、そんなことはどうでもいいのだ。
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