ヤンデレな人たち
 まずはドラムスティックで少年を叩き始める。遠慮なんてものは皆無で全力で叩きつけてくる。



 それに気を取られて少年の頭にギターが振り下ろされる。何も出来ずに直撃しそのまま床に叩きつけられる。頭からは血を流している。もちろん彼女のギターにも彼の血がこびりついている。



「あはは!どうかな?私のギターテクは!」



 そう言って隣にエレキベースを持っている彼女も同じように叩きつける。彼女は柔らかい腹部目掛けて叩く。その度に口からは消化中のものや胃液が口から逆流してくる。



「痺れるでしょ!興奮するでしょ!血を出すくらいだもんね!」



 そして様々な機械を持っている少女は、まだ無事な部分に何かを貼り付ける。そして機械のつまみをひねったりボタンを押したり離したりする。その度に少年の身体が跳ねたり、暴れたりする。



「ふふふ。私はマニピュレート。どうかしら?私の用意してきたプログラミングしてきた音は?」



 約五分ほどの『演奏』を終えた彼女らはやりきった感のある笑顔と汗とそして少年の血が顔にしっかりと突いていた。



「今日は私たちの演奏を聴いてくれてありがとう!どうだったかしら――ってもう生きているわけないわよね」



 少年のことを何度か触ってみるが、動くはずもない。頭は陥没していないところなどなく元の顔がどういうものだったかもう分からない。全身から血が滴り、身体も不自然に曲がったり、紫色に変色している部分も多い。



 血は全て床のカーペットに染み込んでいくが、染み込みきれない血が上にたまって水たまりのようになっている。



「さあ、今日は後『何公演』あるんだっけ?」



「後三つよ」



 顔に付いた少年の血を指で拭きとって舐める。そして笑みを浮かべる。



「私たちの演奏を聞かせてあげたい人たちはまだ大勢いるわ。早く行きましょう」



 彼女たちは何食わぬ顔をして少年の部屋を後にした。

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