教育実習日誌〜先生と生徒の間〜
「親父さん、きっと激務だろう。
今、どこも産婦人科は医者不足だって言うからな。
ちゃんと休み、取れてるのか?」
ちらっと吉川の顔を見る。
いかにも頭も育ちも良さそうなルックス、なんだよな。
下宿してまでうちの高校へ通ってくる奴は、大抵偏差値も高いけどさ。
「いえ。物心ついた時から、家にはほとんどいません。
たまの休みや夜中も、いつも病院から呼び出されていました」
「だろうな。親父さんとゆっくり話す暇もなかっただろ?」
「そうですね。家にいるときはなるべく休ませてあげようと思っていましたから」
「お袋さんは?」
「家にいますけれど、祖母の面倒を見ているのと、僕の妹がまだ小さいので・・・・・・」
何となく、読めてきた。
こいつ、寂しかったんだな。
両親は忙しくて、ゆっくり話もできない。
自分は親の期待を背負って、必死に勉強をしてきたけれど、何か満たされない。
そこに現れたのが、自分と同じように「話せない」木内だったって訳か。